デジタルダーツ機を用いた営業に関わる法令ガイドライン

1. 風営法規制から現在への経緯

デジタルダーツ機は、それまで、客の射幸心をそそる恐れのある遊具として解釈され、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(以下風営法)により、風俗営業の範疇でその規制の対象となっていました。
これはゲームセンターのゲーム機などと同様の分類となっており、シミュレーションゴルフなども一括りにされておりました。バー営業を含め、デジタルダーツ機やシミュレーションゴルフ機を設置して営業するためには風営法5号営業許可を取得する必要がありました。

スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の⽤途以外の⽤途として射幸⼼をそそるおそれのある遊技に⽤いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の⽤に供し、⼜はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)

【参照条⽂】⾵営法第2条1号5号

しかし風営法許可のためには種々の条件があり、また申請を取得すると深夜は営業ができないということもあり、ダーツ設置店としての営業が成り立たちません。
そこで適用されたのが、後述の10%ルールというものでした。
遊技機面積が営業面積の10%以下であれば、風営法の届け出が必要無いという解釈基準により、多くのダーツ設置店はこのルールに則り、営業を行っておりました。

2017 年、当協会は政治や関係省庁に対して、デジタルダーツやシミュレーションゴルフは、遊技機の範疇を越えて世界的に多くの愛好者に親しまれ、プロ選手も活躍するスポーツとしてのダーツとゴルフをデジタルシフトさせたものであり、スポーツ文化産業を進化させるものとして大きな可能性を有し、風営法による規制はその可能性を損なわせかねないと強く訴えかけました。その上で、健全性確保のために警察庁とも協議を重ね、業界内の連携を強めることで、2018 年9 月、現在は、デジタルダーツやシミュレーションゴルフのような遊戯設備をは風俗営業の規制対象外とすることができました。ただし、規制対象外とするのはあくまで条件付きですので以下、通達内容を正確に理解する必要があります。

警視庁から平成30年9⽉21⽇に出た通達により

デジタルダーツについては、プロ選⼿による競技が⻑期にわたり⾏われており、シミュレーションゴルフについては、ゴルフの練習の⽤に供されているなど、運動競技⼜は運動競技の練習の⽤に供されている実態が認められる。

(中路)

当該デジタルダーツ及びシミュレーションゴルフについては、営業者により、本来の⽤途以外の⽤途として射幸⼼をそそるおそれのある遊技の⽤に供されないために必要な措置が適切に講じられていると認められるものとして、当⾯、賭博、少年のたまり場等の問題が⽣じないかどうかを⾒守ることとし、規制の対象としない扱いとする。なお、営業者により、上記の措置が講じられないものについては、従前どおり、規制の対象となる。

デジタルダーツ及びシミュレーションゴルフを設置して客に遊技をさせる営業の取扱いについて(通達)

上記の抜粋からわかるとおり、これらはあくまで暫定的な条件で、ダーツ設置店が未成年のたまり場になったり、ダーツ設置店で飲酒問題があったり、賭けダーツなどが摘発されたりするようなら、すぐに元のように規制されることになる可能性があるのです。
また、デジタルダーツが風俗営業の規制対象外として扱われるには以下の条件がつけられています。

  • 営業者が目視又は防犯カメラの設置により、当該営業所(店舗)に設置されている全ての遊技状況を確認することができること
  • 当該営業所(店舗)に、電子ダーツ機以外の風営法対象ゲーム機が、いわゆる10%ルールの範囲を超えて設置されていないこと

以前のように風営法5号として規制されることになると、違反した場合、2年以下の懲役、または200万円の罰金という厳しい罰則があります。

再度、風営法5号認定されることが無いよう、健全な営業をすることが、ダーツ業界全体のテーマと言えます。

2. ダーツ設置店開業手続きについて

ダーツ設置店を開業しようとする際に注意すべきポイントなどについて説明します。
ユーザーがダーツに接する場所としては、ゲームセンターやダーツ設置店が一般的です。
この2つのパターンで、実はその法的な取扱いは異なります。
ゲームセンター内においてデジタルダーツ機を設置する場合は、ゲームセンター自体に風営法5号の許可を取得する必要があります。ここでは風営法5号営業許可が不要となったダーツ設置店として、その店内にデジタルダーツ機を設置する場合を想定しています。

飲食店営業許可

バーであれば飲食店に該当しますので、飲食店営業許可を受ける必要があります。飲食店営業許可については、店舗がある地域を管轄する保健所に対して許可申請します。
以下の書類を開業の10日前までに届出なければいけません。

  • 食品営業許可申請書
  • 営業施設の大要
  • 施設の平面図及び付近案内図
  • 食品衛生責任者の資格を証明するもの(原本)・営業許可申請手数料
  • 発行後6力月以内の登記簿騰本の原本(法人)

詳しくは、管轄の保健所にお問い合わせください。

深夜における酒類提供飲食点営業開始用出

お酒を飲食物のメインとして提供する飲食店が深夜0時を過ぎて営業する場合には、別に「深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書」(以下深夜営業の届出)の届出を行う必要もあります。
店舗がある地域を管轄する警察署に対して深夜営業の届出を提出して、深夜営業許可を受けておく必要があります。
また、場所や設備、店内の明るさ等に関する要件がありますので、事前によく確認しましょう。

深夜にお酒を提供するということは、酔っ払ったお客様が騒いだりして近隣の方々に迷惑を掛けてしまうことになるかもしれないので、このような決まりがあります。届出を行わずに営業を行った場合には、風営法違反となり50万円以下の罰金が科せられます。
なお、深夜酒類営業の時間については地域により条例が異なりますので、営業される自治体にご確認ください。

3. トーナメント等大会運営の注意点

ダーツ設置店であるならば特に気をつけなければならないポイントについて解説します。

トーナメントと賞金について

プールバーやダーツ設置店で行われるトーナメントについて、賭博罪(刑法185条)および景品表示法に抵触する可能性が生じるため、法規制の内容をよく理解しておく必要があります。

なお、デジタルダーツが風営法5号営業から除外される以前は(上記参照)、賞金や賞品、割引券等を遊技の結果に応じて提供する事は、風営法23条2項の規定により違法とされていましたが(10%ルールの範囲内(※後述)でも違法)、風営法5号営業から除外されることにより風営法23条2項による規制は適用されなくなっています。

第二条第一項第四号の営業(ぱちんこ屋その他政令で定めるものに限る。)を営む者は、前条第一項の規定によるほか、その営業に関し、次に掲げる行為をしてはならない。

一 現金又は有価証券を賞品として提供すること。

二 客に提供した賞品を買い取ること。

三 遊技の用に供する玉、メダルその他これらに類する物(次号において「遊技球等」という。)を客に営業所外に持ち出させること。

四 遊技球等を客のために保管したことを表示する書面を客に発行すること。

 2 第二条第一項第四号のまあじやん屋又は同項第五号の営業を営む者は、前条第一項の規定によるほか、その営業に関し、遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない。

 3 第一項第三号及び第四号の規定は、第二条第一項第五号の営業を営む者について準用する。

【参考条文】風営法第23条(遊技場営業者の禁止行為)

トーナメント参加者との関係

トーナメントにおいて参加者が参加費を支払い、勝敗の順位に応じて主催者が賞金や賞品として参加者に分配する場合、原則として賭博罪が成立します。

例外①

参加者に対して小額な商品を提供するに留まる場合は、刑法185条但し書き「ただし、
一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」に該当し罪にはな
りません。

例外②

参加者が参加費を出す場合でも、賞金や商品が協賛者から提供されている場合は賭博には該当しません。参加者が出したお金を参加者間で取り合う行為が賭博罪として処罰の対象とされています。
ただし、主催者と協賛者に金銭のやりとりがある場合などは、賭博罪として取り調べられる場合がありますので、注意が必要です。

「賭博をした者は、50 万円以下の罰⾦⼜は科料に処する。 ただし、⼀時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」

注釈
賭博とは「a勝敗が偶然の事情により決定されること、bその勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争うものであること。」

【参照条⽂】刑法185条

店舗との関係

トーナメントにおいて、店舗が参加者から参加費を集め、勝敗の順位に応じて賞金や商品として参加者に分配する場合、店舗には賭博場開張等図利罪が成立します。

(賭博場開張等図利)
刑法第186条 (前略)
2 賭博場を開張し、⼜は博徒を結合して利益を図った者は、三⽉以上五年以下の懲役に処する。

【参照条⽂】刑法第186条

量刑としては非常に重い罪となりますので、主催者は十分な注意が必要となります。

景品表示法(景表法)

トーナメントにおいて、店舗が参加者に対して景品として賞品や賞金を提供する場合、景表法の規制を受けることになります。

この規制趣旨は、「景品類」の最高額、総額を規制することにより、不当な景品類による顧客の誘引を防止して一般消費者の利益を保護するとともに、過大景品による不健全な競争を防止するという点にあります。豪華すぎる「景品類」に惹かれた参加者が理性的に判断できずにトーナメントに参加してダーツをしてしまうことを予防しようとするものです。

「景品類」の最高額、総額は、下記のとおり規制されています。

懸賞による取引価額景品類限度額
最高額総額
5,000円未満取引価額の20倍取引価額の20倍
懸賞に係る売上予定総額の2%
5,000円以上10万円

景品表示法上の「景品類」については、同法第2条第3項において、下記のように記載されております。

一般に、景品とは、粗品、おまけ、賞品等を指すと考えられますが、景品表示法上の「景品類」とは、
① 顧客を誘引するための手段として
② 事業者が自己の供給する商品又は役務(サービス)の取引に付随して
③ 取引の相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益
であり、景品類に該当する場合は、景品表示法に基づく景品規制が適用されます。

消費者庁HP「景品に関するQ&A」より
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/100121premiums_20.pdf

なお、景品類となるには、自己の供給する商品又は役務について提供するものである必要がありますが、トーナメント主催者(店舗事業者、イベント事業者)とは異なる企業が景品提供することの可否については、ケースバイケースの判断になります。
なお、③について、正常な商慣習に照らして(a)値引,(b)アフターサービスと認められる経済上の利益及び(c)正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に付属すると認められる経済上の利益は含まないこととされていますが、その範囲はケースバイケースであり、これらの事象については、事前に弁護士等に相談する必要があると言えます。

風営法

風営5号営業からは除外されているものの、深夜12時以降に客に飲食とともに遊興をさせる営業は特定遊興飲食店として規制されており、トーナメントの開催も営業形態次第では、特定遊興飲食店営業に該当する可能性があります。その場合、特定遊興飲食店営業許可を取得することで朝まで営業可能となります。
特定遊興飲食店営業許可取得の要否、取得の可否についてはケースバイケースとなり、こちらの場合も、事前に弁護士等に相談するなどして責任ある営業が求められます。

特定遊興飲⾷店営業を営もうとする者は、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する公安委員会の許可を受けなければならない。

【参照条⽂】⾵営法31条の22

「遊興をさせる」とは、遊び興じさせることであるが、特定遊興飲⾷店営業として規制対象となるのは、営業者側の積極的な⾏為によって客に 遊び興じさせる場合である。
(該当例)
・のど⾃慢⼤会等の遊戯、ゲーム、競技等に不特定の客を参加させる⾏為
・バー等でスポーツ等の映像を不特定の客に⾒せるとともに、客に呼び掛けて応援等に参加させる⾏為
(⾮該当例)
・ボーリングやビリヤードの設備を設けてこれを不特定の客に⾃由に使⽤させる⾏為
・いわゆるカラオケボックスで不特定の客にカラオケ装置を使⽤させる⾏為
以上、⾵営法解釈運⽤基準21ページ

⾵営法解釈運⽤基準21ページ
https://www.npa.go.jp/laws/notification/seian/hoan/hoan20180130.pdf

4. ダーツ機以外のアミューズメント機の取り扱い

10%ルールについて

10%ルールとは、ゲーム機の床面積が、店舗内の客室面積の10%を超えなければ、風営法の許可は必要ないというものです。
デジタルダーツ機はそもそも風営機ではなくなったため、このルールの適用すら受けませんが、ルール自体は存在しており、特定の遊戯設備に関しては、依然として10%ルールが適用されることに注意しましょう。
つまり、スロット機やトランプ台等、別のゲーム機を置いている店舗に関して、ゲーム機の占める面積が客室面積の10%を超える場合は、今まで通り風営法5号の許可を取る必要があるということです。
その場合、ゲームセンターと同じ扱いになりますので深夜営業が出来なくなります。

風営法の営業許可が必要となる主な遊戯設備

  • テレビゲーム機(家庭用含む)・メダル等を使用するパチンコ機・スロットマシン
  • ピンボール・フリッパーゲーム機
  • クレーンゲーム機・トランプ台を使用するトランプ競技
  • ルーレット台を使用するルーレット競技

これらのゲーム機設置部分を占める割合が10%を超えない場合は、当面問題を生じないかどうかの推移を見守り、風俗営業の許可を要しない扱いとします。
また、”客の用に供される部分”には、カウンターやレジの内側等専ら従業者の用に供されている部分や、洗面所等当該フロアとは完全に区画されている部分、風営機でないデジタルダーツ機と投的エリアは含みません。
これらを設置する場合は、事前に所轄の警察等に相談することをおすすめします。

5. 未成年者について

ダーツ設置店の運営では未成年に出入りについて特に慎重にならなければいけません。
ご存知の通り、満20歳未満の人はお酒を飲んではいけません。
飲食店にも、満20歳未満の人へのお酒の提供は禁止されており、未成年者であることを知ってお酒を提供した場合には、「未成年者飲酒禁止法第1条第3項・第3条第1項」により50万円以下の罰金に処せられます。
この罰金は、未成年者であることを知ってお酒を提供した場合にのみ課されますので、飲食店側が知らなければ適用はありません。
しかし、「未成年者飲酒禁止法第1条第4項」は、罰則はないものの、飲食店等に、満20歳に達しない人の飲酒を防止するために年齢確認その他の必要な措置を講じる義務を課しています。
よって、客が満20歳未満であることを知らずにお酒を提供した場合であっても、確認などの措置が不十分であれば、「未成年者飲酒禁止法第1条第4項」違反となります。
さらに、未成年の喫煙も禁じられています。望まない受動喫煙を防止するため、改正健康増進法では未成年者の受動喫煙防止を徹底しています。そのため、満20歳未満の人は喫煙可能エリアへの立入が禁止されています。
そして、忘れがちですが、18歳未満の年少者が午後10時から午前5時までの間にアルバイトをすることは「労働基準法第61条」で禁じられています。
午後10時以降に18歳未満の年少者を働かせていることが明るみに出ると、雇った側が罰を受けることになります。
その罰則は「6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金」と、たいへん厳しいものです。
さらに、年少者の健康及び福祉の確保等の観点から「労働基準法第60条」では年少者が法定労働時間を超えて働くことを禁じています。
法定労働時間とは1日8時間、週40時間ですが、18歳未満の年少者はその枠を超えて働くことはできません。
深夜バイトを行わないことはもちろん、法定労働時間を超えて働くようなこともないようにしましょう。また、自治体によっては条例により高校生の深夜業を禁止しているところもあります。

6. その他

喫煙目的店について

改正法により、多数の利用者がいる施設、旅客運送事業船舶・鉄道、飲食店等において、原則屋内禁煙となります。全面施行された2020年4月以降にこのことに違反すると、罰金の対象となることもあります。
改正法では、施設における事業の内容や経営規模への配慮から、これの類型・場所ごとに、喫煙のための各種喫煙室の設置が認められています。各喫煙室においては、それぞれ設置可能となる条件が異なります。
喫煙目的として営業する場合は、必ず各自治体等にご確認願います。

厚生労働省「喫煙を主目的とする施設」
https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/business/restaurant/type_4.php

7. さいごに

これまで説明した通り、ダーツ設置店の運営には風営法をはじめ、さまざまな法律が関わっており、違反者には罰則が科せられます。
事業者の皆様にはそのことを充分に留意し、法令を遵守していただくことの重要性を理解していただきたいと切に願っております。
「警察が来なければいい」や「来たら言い逃れをすればいい」では免れないことをご理解の上、明るく健全な業界作りに邁進していただければ幸いです。
皆さま事業者の一人一人のモラルがソフトダーツ業界の盛衰を担っていることをご認識ください。
15世紀イギリスに始まったダーツ・ゲームは、近年デジタル化によるソフトダーツに進化し、年齢や性別にかかわらず手軽に楽しめるゲーム・スポーツとしてわが国の文化・娯楽において確かな地歩を築きつつあります。
特に今後はソフトダーツプレイヤーの増加に伴い、⻘少年問題などの社会問題との接点や軋轢も予想され、ソフトダーツに関わるプレイヤーも事業者も一体となって諸課題に取り組み、健全なゲーム・スポーツとしてのソフトダーツの社会的認知の促進を図るべき時代を迎えています。
もし、近隣に違法営業をしているような事業者あれば、そのような事業者に法令遵守の啓蒙していただきたいと思います。

当協会に相談していただいても構いません。私どもは今後も当協会事業を広くご理解いただき、ソフトダーツの社会的認知が向上するよう努力していく所存です。